031 私と新人看護師と
フラクタルのステップアップLOVE担当、のぞみです。
新人看護師の皆さんは3週間お疲れさまでした。怒涛だった4月も、そろそろ終わりが見えてきましたね。
私が所属している病院では、先週の金曜日に部署発表があったそうで、今日、月曜日から部署での業務が開始となります。今年度は3名の新人看護師さんが所属してくれることになったと聞いています。
すでに病棟所属が始まって、患者さんの受け持ちをしている新人看護師さんもいらっしゃることと思います。
看護師になってみて、どうでしょう?
毎日楽しく過ごしていますか?
ご飯は食べれていますか?
眠れていますか?
私は普段敬語を崩さず、基本的に仕事中は無表情な先輩なので、きっと怖いんじゃないかと思います。でも皆さんが頑張って働いている姿を、意外と結構近くで真面目に見ていたりします。
さてここで、新人看護師の心得について、報・連・相の重要性だとか、メモを取れだとか、体調管理の必要性だとか、筋トレの素晴らしさだとかプロテインの有用性だとか、そういったことをつらつら書き留めてもあまり面白くないので(え?読みたい?)、 私が新人看護師だったときにこう言う精神を持って仕事に臨めたら良かったな~、と思ったはなしをしたいと考えています。
まぁ実際問題、毎日元気に出勤してきてくれれば、それで良いですよ。本当に、それで。
ひとを好きでいてください。
医療が治療をすることができないひとはごまんといるけれど、看護ができない対象はいない、とよく言われています。
多くの看護理論家が人間の概念についての定義を考えています。保助看法における法律的な看護の定義は、“診療の補助と療養上の世話”となっていますが、看護は人間と人間同士の相互作用によって生まれています。無限に創造される営みが、看護なのではないでしょうか。
最近はあまりないのかもしれませんが、実習での教員、病棟指導者の理不尽な圧力によって、看護師って怖いな。嫌だな。と思いながら看護師になったひとも、実際多くいるのではないでしょうか。
ビクビクしながら院内を歩いている看護学生さんを見ていると、看護師って因果な商売だな、って思ったりもします。
人間不信の状況で看護をすることは、正直なかなか辛いものがあります。これも単なる受け売りですが、看護は究極の対人援助職です。
なので、そもそもひとが好きではないときっと辛いし、天井が迫ってくる感覚がそのうち出てくるような気がします。
そもそも私が看護師を目指したきっかけが、専門職……手に職……身も蓋もない言い方するとお金……みたいなところからスタートしているので、純粋に崇高な気持ちで看護師になったひとよりも、ひとに対する優しい気持ちや思いやりの気持ちがやや欠如していて、新人看護師の頃、看護=仕事・業務だと言うウエイトがとても高かったがために成長が遅かったと考えています。
ひとを好きだったひとのほうが、成長する。しかもその速度は、早い。
初めて勤めた病院、初めての病棟では同じ病棟に、同期5人で配属されました。
高校卒業と同時に看護学校に行ってストレートで看護師になった子が2人、社会人経験があるひとが私を含めて3人。ちょうど年齢的には、真ん中でした。
社会人経験があるママさんは、すごく頭の回転も早いし勉強もできるし、目配り気配りができる。ストレートで看護師になった子たちは自分の理想の看護師像に近づくべくたゆまぬ努力をしてる。
早いはなしがその中で落ちこぼれだったんですよね。
好きこそものの上手なれ、は絶対に絶対に本当で。でも看護って正解が見えない、各個人によって定義もバラバラ(現在の所属部署では、清潔ケアをする=看護だと思ってるエライひとが多いです)なものなので、目の前の患者さんだったり、一緒に働く看護師、多職種を好きでいて欲しいと、切に思っています。
対象のことを、 よく看てください。
本当にさっきから月並みなことしか言っていませんが、看護は観察に始まって観察に終わります。
別に熱や血圧はやり方さえ教えれば患者さんにだって測れます。車椅子やストレッチゃーの移送、清潔ケアも看護助手さんができます。採血は臨床検査技士さんができるし、リハビリだってそのための専門職のひとがいます。じゃあそれを看護師がやる理由は?ってことを、 絶えず忘れずに考え続けてもらいたいです。
先ほどちらっと書きましたが、私の所属している部署では看護=清潔ケア!正義!と言う謎の概念が横行しているので、例えば患者さんが人工呼吸器から離脱した直後、高濃度で酸素を投与して、やっとSPO2が95~96%だと言うのにも関わらずみんなでがんばってせっせと清拭をしている光景をよく見かけます。
また、レントゲン室に患者さんを連れて行く朝の検査の時間と、病棟内の清拭を行う時間がかぶっていますが、多くの看護師が清拭を優先させます。そのため看護助手さんが患者さんをレントゲンに連れて行ってくれるのですが、例えばシリンジポンプでカテコラミンを持続投与している患者さんも、車椅子に乗れるようであれば看護助手さんが レントゲン室まで連れて行ってくれます。
必要性のアセスメントが、看護です。
足し算だけじゃなくて、必要であれば引き算することも、看護です。
清潔ケアはとても良いことだと思います。
私も隙あらば洗髪に、足浴に、と精を出します。大抵の患者さんは『気持ちいい』『さっぱりした』と喜んでくれますが、 極論、清拭しなくても患者さんは死なないけど清拭したら患者さんが死ぬケースは、たまにあります。
酸素を投与してSPO2がやっと基準値のひとの酸素消費量を上げたらどうなるかって言う身体的なアセスメントも、シリンジポンプの操作ができない看護助手さんと患者さんが自分の目の届かないところ行ってしまうと言うリスクアセスメントも、しっかり行ってもらいたいです。
なので、注意深く、看て欲しいです。
意識はあるか、呼吸はあるかは勿論ですが、皮膚の状況、ネームバンドの位置、 ポンプやドレーンなどの付属物、ベッドの周りに置かれた写真やお守り、ひとつひとつに意味があるので、 考えてもらいたいです。
私のメンターの先輩は、よく『“患者さんにもっと寄り添いたいんです”って言う看護師ほど、最低限の病態理解も、観察もアセスメントもしないでそう言うことを言う。苦しんでいることの内容を正しく理解してもいないやつにそう言うこと言われたくない』って言うのですが、本当にそうだと思います。
最後に、外に遊びにいきましょう。
どんなに大きくて広い病院でも、独自のルールや不文律がある、ある意味密室です。
真面目な看護師さんであればあるほど、職場と家の往復、仕事から帰ったら今日見た処置を復習して、休みの日は病態生理と看護の勉強、 と根を詰めがちですが、精神衛生上良くないので、太陽の光を浴びてください。
看護だけが自分の世界だと間違った認識を持っている看護師さん(新卒で、学生時代バイトもしないで、ずっと看護師になろうと思ってきたひとに多い気がします)は意外と多いので、折角遊ぶ金を手に入れたならちゃんと遊びに行きましょう。一歩引いて、視野を広く持つことをおすすめします。わたしは試行錯誤して、そのほうがQOLが上がることがわかりました。
あとは初任給でお父さんお母さんにお寿司を奢ると喜んでくれると思いますし、私もお寿司は大好物です。大好物です。かっぱ寿司でも大丈夫ですよ。
一緒に働けることを、楽しみにしています。