わたしはまだ煉獄さんの死を引きずっている

鬼滅の刃の映画、すごかった。
本当にすごかったと思う。
迫力があった。映像もきれいだったし、音楽も良かった。やっぱり動いてしゃべるキャラクターが見れるのは、アニメーションの醍醐味って感じがする。
(アニメ2期、というか、遊郭潜入編見たいなぁ……)
(なお、わたしの推しは宇髄さんです)

猗窩座のCV石田彰にビックリしたの、わたしだけなのかな。みんな事前情報確認して行った?
鬼狩りを鬼になるように勧誘するように声をかけるパターンって、作中何回かあると思うんだけど。無惨→厳勝(黒死牟)とか、黒死牟→獪岳、黒死牟→無一郎くんとか。
その中でも猗窩座→煉獄さんのシーンは印象的で、でも煉獄さんがそれを是としないことは、そもそもみんなわかってたと思う。

でもCV石田彰じゃん。

CV石田彰に『お前も鬼にならないか?』『鬼になろう杏寿郎』って言われたら、こう、なにか、なんだろう、グッと来るものがありますよね……。一気に優男感が出た上に、誘惑者らしい声だった。

しっっっかし、煉獄さん、かっこよかったね。

煉獄さん自身、夢の中での自意識のことを鑑みると“頼れる兄貴でいたい”って欲求を持っていて、そしてそれが強かったように思う。

兄貴っていうのは、兄貴分=年上の、親分肌のひとのことを指す意味合いもあるけど、実弟の千寿郎くんに対して、頼れる兄貴でいたかったんだと思う。

大正のことはよくわからないけど、どうやら二十歳が成人だと制定されたのは明治のことらしい。煉獄杏寿郎、二十歳。落ち着きすぎていることが、わたしにはどうにも息苦しい。
千寿郎くんの年齢は出てこないけど、7~8歳くらいは離れてると思う。兄弟(姉妹も)というのは年齢が近ければ近いほどケンカが絶えないものらしいけど、ケンカにならない、曇りなく愛情を注げて、その愛に曇りない尊敬を返せる年齢差ってだいたい7~8歳くらいだと思う。ソースはわたし。

鬼殺隊の柱の皆さんは、みんな、壮絶な過去を背負って柱をやってる。

富岡さん。鬼に姉を殺された。最終選別では錆兎も亡くした。生き残ってしまった、という気持ちから、心を閉ざした。

しのぶさん。鬼に両親を殺された。最愛の姉も殺されて、自分を殺して笑顔を絶やさないことを誓った。

宇髄さん。忍の一族に生まれて、感情があることを否定され続けてきた。

無一郎くん。鬼に兄を殺されて、そのからだに蛆がわいて腐っていく様子を眺め続けた。そして記憶喪失になった。

蜜璃ちゃん。ありのままの自分を偽ることへの疑問を感じて、鬼殺隊に入隊した。

悲鳴嶼さん。鬼を殺したことへの救いがひとつもなかった。労って欲しかったことが叶えられなかった。

実弥。鬼になった母を殺した。弟を守るために。そしてそれを責められた。

伊黒さん。鬼への生贄として座敷牢で育った。

そして、煉獄さん。煉獄杏寿郎。
代々炎柱を輩出する名門、煉獄家。

柱の皆さんがたちょっとサイコパ……いえ、ちょっと、個性が強すぎてあれですけど、杏寿郎はなにひとつとして間違ったことはしてない、言ってない。
溌剌と怖いこと言ってるし、基本目の焦点が合ってないからなんか不安定な感じだけど、初登場シーンで炭治郎(と禰豆子)の首をはねようって言ったのも鬼殺隊の柱としては妥当中の妥当だったと思う。

でも、正しさって危うくて、正しいことの筈なのにひとを傷付けたりするのはなんでだろうってよく思う。間違ったことはして(言って)ないのに。

で、ふと思ったのはこれです。

スティーブン・ファーマーによると、機能不全家庭は家庭内にいくつかの兆候が見られる。

・拒絶
・矛盾
・家族への無共感
・家族間の境界線の欠如
・親子逆転
・社会からの孤立
・曖昧なメッセージ
・極端な論争・対立
(Wikipediaより)

からの、

医師の竹村道夫は、アダルトチルドレンに特徴的な徴候として以下を挙げている。これらの根拠や、研究・検証の有無は不明である。

・自分の判断に自信がもてない。
・常に他人の賛同と称賛を必要とする。
・自分は他人と違っていると思い込みやすい。
・傷つきやすく、ひきこもりがち。
・孤独感。自己疎外感。
・感情の波が激しい。
・物事を最後までやり遂げることが困難。
・習慣的に嘘をついてしまう。
・罪悪感を持ちやすく、自罰的、自虐的。
・過剰に自責的な一方で無責任。
・自己感情の認識、表現、統制が下手。
・自分にはどうにもできないことに過剰反応する。
・世話やきに熱中しやすい。
・必要以上に自己犠牲的。
・物事にのめり込みやすく、方向転換が困難。衝動的、行動的。そのためのトラブルが多い。
・他人に依存的。または逆にきわめて支配的。
・リラックスして楽しむことができない
(Wikipediaより)

まぁ、なんつーか、誰しもどっかしらなんかしらあるとは思うんですよね。生きにくいって、呼吸がしずらい感じ。鬱屈としたモヤモヤはひとひとりを溺れさせて沈めるくらいの破壊力は持ってる。

煉獄さんのお母さん・瑠火さん。きっと煉獄家の柱はこのひとだったんだろうなと思う。精神的な支柱。

支えを喪って父親は飲んだくれになった。息子たちに辛辣な言葉を投げ掛けるようになった。不甲斐なさを悔いていることもわかる、始まりの呼吸=作中とびっきりのチートキャラである縁壱さんについて書かれた書物を読んで自暴自棄になる気持ちもわかる、杏寿郎自身も気付いたけれど息子たちを死なせたくない気持ちも、わかる。

支えをうしなったところで、杏寿郎が必死に立ち回ったことも、なんとなくだけど、わかる。

そうじゃなかったら『父には体を大切にしてほしい』と伝えてくれなんて、自分の忌の際に言えないと思う。

例えば生まれながらにして、物心つくときには既に、家族としての機能が停止していたら話は早かったのかもしれないと思うことは多々ある。これは今回の鬼滅の刃のはなしに限らずだけど。

千寿郎くんはそのパターン。
モノローグで『千寿郎はもっと可哀想だろう 物心つく前に病死した母の記憶はほとんど無く父はあの状態だ』って。

正常な状態を知らなかったらそこへ戻りたいとは思わないんじゃないか。元々そういうもんだと思ってたらもがくこともなかったんじゃないかと思う。

果たして杏寿郎がそうだったかは、知る由もないけど。
それでも、家族の不和を受け止めて傷つきながら戦ってたのかなと思うと、あの全集中の呼吸=それ以外のことは一度全て置いておけることで自意識とか自我を上手く保ってたのかもしれないと思うと、より一層彼の死が、本編のたった一夜の出来事が、強く心に刻まれる気がして。

少し苦い気持ちが長続きしている気がします。

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