19.エンド・オブ・ライフを読んだ
川端康成が『別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます』って言ってた。まぁこれは別れる男に対して毎年どうにかして自分の存在を花と一緒に思い出させるための呪詛みたいな言葉だと思うんですけど。
季節が移ろって繰り返すその流れの中で、きっと同じ花は何度も咲いて、その度に思い出す限り、お別れするひととは離れていてもそばにいるんだろうなって思った。
訪問看護師として読んでたつもりだったのに、気持ち的には著者の佐々さんにどんどん感情移入していったように感じる。結構、辛かった。
(一番辛かったのは佐々さんのお母様が血液内科に入院されたシーン……色んな意味でめちゃくちゃ苦しくなった)
あ、訪問看護師としてはね!
すごく情熱をもって、利用者さんのためにってまさに奔走する渡辺西加茂診療所の皆さん、本当にカッコイイ!尊敬しかない!!!いいなって思った!!!
(雇用体制とか制度とかそういうしがらみにがんじがらめになってるわたしには出来ないことだから余計に……)
(1回仕事以外でやってみたいなー。結婚式とかお墓参りの付き添い。ボランティアとかに登録すればいいのかな?)
悲しくてやりきれないケースもあったけど、願いを叶える魔法使いみたいだって思った。魔法の杖もなにもないけど、泥臭くだけど、その足で。その手で。奇跡を起こしてるみたいだった。
やっぱり訪問看護っていいなー!
……って思って結構嬉しかったんだけど、主題はもちろん『ひとりの訪問看護師が末期がんになり、その命を閉じていくところをそばで見つめる』です。
訪問看護師だからこそ、自分の状況状態を正確に、客観的に見れてしまって余計に辛いものがあるんだろうなと思った。でも、だからこそ、その生きかたと逝きかたは晴れやかですらあった。
わたしも性格的には森山さんと同じようになって、周りを混乱させそうだなと思った。今のところあんまり死に抵抗はないけど、こーゆータイプだから余計にさいごのさいごに必死にもがき苦しむだろうなとは思ってる。
あとはよろしく。できれば海が近いところで死にたい。
やっぱり鎌倉がいいな。
逗子マリーナ?うーん……アリかも!
(高度なギャグ)
以下ネタバレ↓
というか読みながら書いてたメモ↓↓↓
【登場人物】
森山文則(48) 射手座 茨城県出身
訪問看護師。若手の指導担当も行っている。職業が服を着て歩いているような人。
高校生と小学生の娘がいる。
膵臓がん、肺転移疑いの診断。ステージⅣ。
五分刈りで細身、穏やかな物腰で禅僧のような出で立ち。
すごく射手座っぽく、いてもたってもいられない性分なんだろうな、放たれた矢のごとく、とにかく動いちゃうひとなんだろうなと思った。西洋医療をかなぐり捨てて、ホリスティック医療に傾倒。俗にいう“スピってる”状態、かのように思えたが……。
さて、さいごのとき、自室には、どんな花が飾られていたでしょう。
渡辺康介
森山が在籍している渡辺西加茂診療所の院長。
真っ白なひげにとびきりおしゃれなシャツで往診にいく、白衣を着ない医師。ラブ京都。
娘が引きこもり=自由に外に出ていけない経験をもっている。
吉田真美
ベテラン看護師。がんサバイバー。
現在人工肛門、膀胱をつけて働いている。
腸壁が薄いので急変リスクあり。
入院先から娘の結婚式に出かけた経験がある。
村上茂美
訪問看護師。マネージャー。救急病棟での勤務経験がある。
小学生の頃から看護師になりたかった。
蓮池史画
非常勤の緩和ケア専門医。疼痛コントロール、症状緩和が得意。
尾下玲子
転勤してきたばかりの緩和ケア認定看護師。
佐々へ「お願いがある、京都に来てほしい」とメッセージを送る。
岡谷亙
事務局の若手の男性職員。
豊島昭彦
ヘルパー長。
いつも元気。診療所のムードメーカー。
「家にはその人の愛着のこもったものがあるので、愛しい」
早川美緒
非常勤医師。
小さな頃から死が怖く、どうしたら苦しまずに死ねるかを突き詰めて考えていたら医師にたどり着いた。いまだに死が怖い。
命を長引かせることをなによりも優先して、尊厳が守られていないICUでのショッキングな出来事を、忘れられない光景として挙げている。
小原章央
森山の在宅の担当医。
森山の依頼で鎮静を開始する。
日本たんぽぽを摘んで持ってくる。
田中由美
現在はヘルパー。
家族ではない人(元カレ)を看取った経験がある。
在宅医療でのスタッフとの関わりを、ずっと一緒にいたい、さよならしたくないと思いヘルパーの資格をとり渡辺西加茂診療所に就職する。
佐々涼子
(元)ノンフィクションライター。
在宅医療の取材で森山たちと出会う。実家の母親が在宅で介護を受けているため、在宅医療の現場に興味を持つ。
死をテーマにした作品を書くことにコンプレックスを感じ、ドロップアウトしてしまった。
はじめて買ったCDアルバムはビリー・ジョエル。1968年生まれの佐々さんが中学生のときなのでAn Innocent Manかなと想像。
佐々さんの母
大脳皮質基底核変質症。要介護5。
徐々に運動機能障害が進行し、寝たきりで意思の疎通も行えない。
自宅の庭には白芙蓉が、自分で手入れができなくなった今でも、揺れている。
佐々さんの父
356日24時間妻の介護を行っている。
7年間の介護生活を送る、まさにスペシャリスト。妻との初デートは寄席。
【患者】
木谷重美(37)
食道がん。夫、小5の娘・麻由佳がいる。
「どうしても、どんなことがあっても」と、家族で潮干狩りに向かう。京都から愛知・知多半島への180kmの長距離ドライブへ。森山、尾下、岡谷が付き添う。
最期の旅支度は麻由佳が選んでくれた、ひまわり柄のワンピース。ひまわりの花言葉は『情熱、憧れ』
篠崎俊彦(61)
膵臓がん。クリスチャン。
ログハウス風のお花が咲き誇る素敵なお家に住んでいる。診療所の主催のハープのミニコンサートを家で開くことに。
妻・美津子、社会人の長男、大学生の二男、三男がいる。
口癖は「楽しく、楽しくね」
息子たちのギター演奏で見送られる。
家の門にはジャーマンアイリス。ジャーマンアイリスの花言葉『燃える想い』、そして『幸せな結婚』
中山悟(仮名、52)
脊髄梗塞。疼痛コントロール不良。
妻、1歳の娘がいるが、家族を愛することができない。自殺未遂の末、妻に離婚を切り出される。
両親と暮らすために他の町へ引っ越し、亡くなった。
山田敏雄(仮名、77)
ゴミ屋敷のマンションで独居。暴言、暴力行為あり。
徐々に体力低下、転倒を繰り返し大腿骨骨折で入院。望みは『家に帰る』。どうしたら望みを叶えられるか話し合った結果、診療所近くのアパートに転居してもらい、在宅療養を支えることに。
森下敬子(42)
胃がん。
夫、中学生、小学生の娘がいる。
母が病気になったことを本当のところどう思っているのかこっそりインタビューして欲しいと佐々さんに依頼する。
徐々に病状悪化してきていたが、吉田看護師に背中を押され、ハロウィン時期のディズニーランドへ。
12月、ホスピス病棟で息を引き取る。拍手で見送られる。
娘たちからは『ひまわりのようなひと』と。ひまわりの花言葉には『あなただけを見つめる』というものも。